SEMIFLAT
期間:2005-2006
用途:専用住宅
所在地:静岡県
規模:地上1階
構造:RC造
用途地域:第一種住居地域
許容建蔽率・容積率:60%・160%
敷地面積:198.77m2
建築面積:104.84m2
延床面積:179.18m2
構造設計:名和研二/なわけんジム
施工:関道建設 遠藤正伸
写真:平井広行
October Ueda and Nakagawa Architects

敷地は牧歌的な風景が広がる郊外にあります。高さ7m、角度25度の自然法面の全面傾斜地です。クライアントのTさんはRCを希望。普通なら軽く作って杭で浮かせて建物を水平にするところですが、RCですからある程度埋めたいし、RC杭の露出部が長くなるところは独立柱状態となり耐震的に良くないので、より多く「埋め込む」方向で考えることにしました。

土工事コストを大幅に削減するため、左右方向、奥行方向ともに、段状の谷となるように掘削し、土量を最小限にすると同時に山留工事を完全に無くしました。最深部となる中央部に外階段およびスロープを配置。それによって、3層分の垂直性が強調され、フラット(平屋)の静的な水平性を強く揺さぶります。外周部外壁は大きな梁として長いキャンチレバーを支えています。従って外周部にはほとんど開口がありません。

大きく広がる風景にもかかわらず閉鎖的な構成です。私たちが敷地に初めて立ったときに感じたことは、決手無く広がる風景に対しては、むしろ閉じることが平安をもたらすのではないか、ということでした。Tさんも同感とのことで、埋め込む方向はそういった面でも支持されました。

閉ざされた構成の中で、風景は、中央部にある外階段およびスロープ、それを切り取るトラス状の柱、その先の居室、そして隙間に見える空のみとなっています。外周部の換気窓からは近くの小さな緑。自然は、風景を見ることを直接の目的としない部分から、繊細な気配として感じられるものになっています。

スロープを歩き屋上に上がって初めて、静岡の広い空を見ることができます。見ると言うよりその下に立つ、と言った方が良いかもしれません。静岡の空は非常に広く、ピクチャーウィンドウに納る類のものではないので、それは正しい選択であったように思われます。